2022

3月終わりの萌芽から始まり、4月いっぱいは平年より気温が高く雨も多かった為、あまりよいスタートとは言えない年でした。5月に入って晴れ間が続いた事により、心配していた開花時と傘かけ作業はスムーズに行えた事でひと安心。その後は程々に雨が降る日もあり、逆に良かったです。昨今の北部九州は、あまりにも晴天が続くと、どこかで災害級の大雨になります。年間の降水量は2,000mm前後で、災害時も例年もそこまで大きな差はなく、分散するか集中するかでした。
梅雨時期は意外と晴れた日も多く、防除もタイミングよく行えましたが、一転コガネムシの食害が過去にないくらい出てしまいました。新しい圃場が造成地の為、土のバランスが取れていないことや、幼木、平均気温の上昇、様々な要因もあり、2022年は殺虫剤を使用しました。個人的な感想でいえば、そこそこ効きますが劇的には効かない。化学の力を借りずとも、人の手で改善できる余地もまだまだありますので今後の課題です。

そして7月に入りヴェレゾンを迎えた頃、恐れていた線状降水帯がきてしまい100mm/日を超える雨。結果として、ベト病がかなり広がりました。とは言え、例年に比べたらマシだったのかと思います。8月も120mm/日の時もありましたが、災害級の雨にはならず収穫を迎えられました。品種によって良し悪しはありましたが、総合的には「悪くはない」でした。

一見ネガティブな報告ばかりに聞こえそうですが、品種の選定や必要最低限の防除、被覆施設の使用等を検討すれば、福岡でも醸造用葡萄の栽培は可能だと思います。年々新しい契約農家さんともご縁を頂き、醸造用品種を新植して頂けていることにも大きな感謝と未来の楽しみを感じています。南北に長い日本、色々なワインがある中で、福岡のゆるりとした風土を感じるワインを楽しんでください。(栽培醸造長 山田朱那)


使用農薬:石灰硫黄合剤1回、ICボルドー6回、殺虫剤(合成ピレスロイド系)2回




ロゼ・名なしのベリオ 2022

2022年は低温でのMC、ステンレスタンク熟成でロゼに仕上げました。MBAのキャンディー香を軽やかにしてよりアペリティフ向きへ。福岡県田川郡の川崎町を知ってもらうため、当初は地名を入れた「川崎ベリオ」を予定。しかし、醸造場所とブドウ産地が同一地区でないと地名を表記できなくなったため、「川崎」が使えず、名なしのベリオです。

福岡県川崎町和田農園のマスカットベリーA、プティマンサン、アルバリーニョ
SO2無添加

参考価格:¥2,200 (税込)




赤・Non Caravan 2022

酢酸と還元がテーマのワインです。2022はステンレスタンクで熟成。一部手除梗する事でMBAのフラネオール香とメルローのメトキシピラジンを上手くマスクできたので、今飲んでも美味しいですが、1・2年でそこそこ化けて面白いはずです。

うきは市・山口貴宏のメルロー、シャルドネ、カベルネソーヴィニヨン、アルバリーニョ
studio gogo自社農園のマスカットベリーA
SO2無添加
参考価格:¥2,530 (税込)




白・Bootleg 2022 <Side Bシリーズ>

サイドBシリーズは、毎年品種構成も変化する実験的キュヴェです。今回は濁りオレンジワイン的な仕上がり。2022は「博多ホワイト」というイタリア×ロザキのマスカット系品種を「ワインにどうですか」と契約農家さんから相談を受けて。もう名前聞いた時点で使命感!これも出会いと思って挑戦しました。そのままの単体だと、香の量に対してボディが細かった為、醸した博多ホワイトとデラウエアをブレンドしました。アロマティック濁りワイン!焼き鳥屋さんに是非。

川崎町・太田農園の博多ホワイト、デラウエア
SO2無添加
参考価格:¥2,420 (税込)




白・Discothèque 2022

2021のDCPはおとなの事情で名前変更!izmとtasteはしっかり引き継がれています。こちらはバスケットプレスで時間をかけて柔らかく搾り樽発酵です。古樽ですが、スキンコンタクトさせながら搾ったデラウエアからは少し綿飴的な甘く香ばしい香。プティマンサンとシャルドネで味を締めています。

うきは市・山下農園のデラウェア、studio gogo自社農園のプティマンサンとシャルドネ
SO2無添加
参考価格:¥2,530 (税込)




Rocksteady Petillant (330ml/試験醸造)

こちらは「boot leg」のアンセストラル。2気圧くらいなので心地よいです。残糖もなし。いきなり醸しの小瓶のアンセストラルというトリッキーな仕込。

SO2無添加





2021

初めての自社での仕込みとなった2021年。小トラブルの連続ながら、無事に収穫・醸造が終わりました。福岡・九州の気候は、前例のない夏の長雨の影響を大きく受け、日照と積算温度の不足に悩まされ一年でした。




赤・名なしのベリオ 2021

福岡県川崎町の和田農園さんのMBA (マスカット・ベーリーA) 主体。日照量と積算温度が大幅に足りていない年でした。糖度や香りが足りないことは仕方なし。マセラシオン・カルボニックをした後、優しくプレス。味のバランスを取るために、混醸でなく発酵終了後にデラウエア、シャルドネ、プティ・マンサンをブレンドし、軽やかな飲み心地に仕上げました。クロックムッシュやホットサンドをご一緒にいかがでしょうか?

名前について: 福岡県田川郡の川崎町を知ってもらうため、当初は地名を入れた「川崎ベリオ」を予定。しかし、醸造場所とブドウ産地が同一地区でないと地名を表記できなくなったため、「川崎」が使えず、名なしのベリオです。

MBA93%、その他7% (デラウエア、シャルドネ、プティ・マンサン)
参考価格:¥2,200 (税込)




赤・Non Caravan 2021

今年は陸路とフェリーで19時間かけたキャラヴァンはしていません!という事で<Non Caravan>。福岡県うきは市の山口貴弘さんのヴィニフェラを主体に、自社のMBA (マスカット・ベーリーA) をブレンド。悪天候で収量は半減し糖度不足でしたので、アルコールはなんと8.5%!そんな事より酢酸バリバリです (笑)。決して葡萄が傷んでた訳ではないです。意図した醸造。去年もう一歩出しきれなかった世界観。ボルシチやナヴァラン、野菜の煮込みに合います。

MBA93%、その他7% (デラウエア、シャルドネ、プティ・マンサン)
参考価格:¥2,200 (税込)




白・Bootleg 2021  <Side Bシリーズ>

Bootleg(海賊盤)と名付けられたこのワインは、毎年品種も構成も変わっていく自由なワイン。元々”Bootleg”は、「boot (ブーツ)」と「leg (足)」を組み合わせた言葉で、アメリカの禁酒法時代に密造酒を長靴に隠して密売していたことから「密造酒」という意味で使われたそう。さて、日本でも禁酒法が目に付いた2021年の僕らの”密造酒” (正規品です) は、長崎県長崎市と西海市のシャルドネと、福岡県うきは市のデラウエア。

Side Bシリーズは一回限りの仕込になることもあるイレギュラーなキュヴェ。こちらは酢酸は出さずに膨よかな仕上がり。ウィークエンド・シトロンを食べながらゆっくりとした午後を過ごしたいです。

デラウエア70%、シャルドネ30%
参考価格:¥2,420 (税込)




白・DCP 2021 (飲食店限定)

DCPはDelaware (デラウェア)、Chardonnay (シャルドネ)、Petit Manseng (プティ・マンサン) の頭文字。そしてDCPは”デラシャルパー”って呼んで欲しい。よくないコレ?コレよくない?

バスケットプレスで36時間。軽いスキンコンタクト。樽発酵、樽貯蔵。こちらも酢酸で遊んでいます。本数が少なく申し訳ありません。デラのタッチを酢酸で抑えつつボディ構成。色々合わせやすいですが、単体でも染み渡ります。

デラウエア50%、プティマンサン30%、シャルドネ20%




ロゼ・Rocksteady  <Side Bシリーズ>

福岡は巨峰の発祥の地として栽培がとても盛んです。しかし、2021年は巨峰の開花時期に天候が不安定だったので、花粉の発達が悪く受精が起らず、種子のない果実を生じる単為結果 (たんいけっか) が過去に例がないくらい発生。単為結果になると、粒が小さいままで食用では商品に向ません。当初、巨峰は予定していなかったのですが、契約農家の方も困ってあったので、購入させていただきワインにしました。
分けていただいた巨峰は、糖度と香は十分にありました。低温で長めにマセラシオン・カルボニックをした後、足で踏み軽く醸しました。昨年まで委託栽培醸造していた<ローズボッサ>よりも厚みのある造りになっていますが、飲み心地は軽やかです。巨峰の香が引き立つようなフレッシュな美味しさにしたかったので、ステンレスタンクで貯蔵後、亜硫酸無添加、ノンフィルターにて瓶詰めしました。通常使われる750mlの瓶ではなく、気軽に飲めるようにクラフトビールに使われる330mlの瓶を使用しています。ロットによっては、多糖類と酵母の影響で糸引きが出ていたり、滓が沈殿していますが、味わいには影響ないと判断しています (山田) 。

ワイン名は「Rocksteady (ロックスティディ)」。Rocksteadyとは、ジャマイカの60年代の音楽で、レゲエが生まれる直前のリズムです。有名なのはパラゴンズの"The Tide Is High"あたりでしょうか。CMでもカバーされていたので聞いたことある方も多いと思います。こんな曲を聞きながらパーティーやピクニックなんかでも気楽に飲んで欲しいワインです。キリっと冷やしてお楽しみください。

巨峰100%
参考価格:¥880 (税込)/330ml





2020

自社ワイナリー稼働前の2020年、収穫したブドウを山梨の三養醸造に持ち込み、2種類の赤ワインをつくりました。この年の福岡は雨が多く、特に3月から9月にかけての雨量は2,400mm以上に達しました(前年比の1.5倍)。発芽期・開花期は好天に恵まれたのですが、夏場の雨が激しく、7月6日は1日に250mm、最大で1時間60mmという大雨のために道路が冠水し、畑に隣接する山も土砂災害に見舞われました。幸いブドウのヴェレゾン(着色)前だったこと、雨の合間を縫っての防除の甲斐もあり、どうにか葉と葡萄を残すことができました。一転してヴェレゾン期の8月は好天に恵まれました。その後、生育は順調に進みましたが、日照不足とベト病の影響による落葉で、熟度不足が見られました。収穫は福岡から山梨までの輸送時間を考慮して、完熟ではなく少し早いタイミングで行いました。醸造に関してはジューシー&スムース。福岡の気候や地質を考え、葡萄本来の美味しさを活かしたつくりです。亜硫酸無添加。




赤・名なしのベリオ 2020

イメージはチャーミングで軽いタッチ。グイッグイ飲める仕上がりです。

MBA90%、シャルドネ5%、アルバリーニョ5%


赤・Caravan 2020

ベリオと比べると芳醇な果実感。あくまでも軽快で飲み心地の良さを追求しました。畑から畑に移動して収穫、さらに山梨までトラックで運ぶという道のりを今期は2回も。ブドウを満載したトラックを見送りしながら、さながら砂漠のキャヴァンのようなだなと。ちなみにキャラヴァンは多くのミュージシャンが演奏しているジャズのスタンダード曲でもあります。とくに有名なのはアートブレイキー&ザ・ジャズメッセンジャーズの演奏。

メルロー30%、MBA28%、その他42% (シラー、プティマンサン、サンジョヴェーゼ、カベルネ・ソーヴィニョン、プティヴェルド)




※すべてのワインが亜硫酸無添加、無濾過のため、18度以下、セラーもしくは冷蔵庫での保存をお願いします。